トランプ 政権下で高市政権の憲法改定の危険、さらに迫る
1.アメリカの他国への軍事干渉が再び
正月早々、アメリカがベネズエラに武力によって攻め込み、マドゥロ大統領を拉致するという暴挙に出た。アメリカをはじめとするいわゆる「西側諸国」による軍事行動は、日本も含む「西側」では「民主主義を守る」かのような理由で大目に見たり、不問に付されることが多い。
そのようなベネズエラでの暴挙の直後、アメリカのトランプ大統領はデンマーク領グリーンランドの領有まで口にし、「西側」のヨーロッパ諸国もさすがに慌てだし、トランプ大統領の言い分に異を唱えざるを得なくなった。
そして2月末、トランプ大統領のかねてからの予告通り、アメリカはイランに対して空爆を開始し、イランの最高指導者ハメネイ師を殺害するという暴挙に出たのである。ベネズエラ大統領を拉致する以上に、他国の体制転覆を狙っての指導者殺害は恐るべきことと言わざるを得ない。(アメリカはそれまでにも、リビアのカダフィ大佐の殺害なども行なっている。)
アメリカのイラン空爆の直前、イランでは大規模な反体制デモがあったこともあり、日本では「アメリカがイラン国民を解放する」かのような言説も飛び交っている。ただ、この大規模デモも、自然発生的なものに加えてアメリカCIAによる煽動の可能性も指摘されている。
「民主主義を守るため」かのように言うアメリカの他国への軍事介入は今に始まってことではないが、これからは日本も無関係では居られず、巻き込まれる、或いは積極的に関わってしまう可能性・危険性が現実味を帯びて来ていると言っても過言ではないだろう。
2.高市首相が「台湾有事」における「自衛隊派遣」を示唆
日本では昨年(2025年)秋に自民党の総裁選により高市早苗氏が総裁に選ばれ、「女性初」の内閣総理大臣に就任した。前々から高市氏はタカ派的言動が目立ち、政権発足時からその姿勢には警戒感を持つ人も決して少なくはなかった。そんな最中、国会で飛び出して来た発言は「台湾有事は我が国の存立危機事態」というものであり、中国が台湾に軍事行動を起こした場合には自衛隊を派遣する旨を述べたのだ。
高市氏の発言によって中国は当然のように敏感に反応し、反発と警戒感を強めた。日本国内では、駐日中国領事の「首切り」発言にのみ感情的に反応した者が少なくなかった。潜在的に反中感情を抱えている者にとっては、どうしてもその刺激的な言葉の方に気を取られてしまいがちになる。しかし、日中国交回復時に交わされた「台湾は中国の一部」を日中両国の共通認識にしている中国としては、内政問題に軍事的に日本が介入する旨の発言をしたことに反発、警戒するのは当然だった。
3.「攻められる危険」よりも
「他国の戦争に征かされる危険」
アメリカのイラン攻撃により、イランはペルシャ湾ホルムズ海峡の「封鎖」を行なっている。その最中に行なわれた日米首脳会談だが、トランプ大統領はホルムズ海峡への自衛隊派遣を求めたとされる。高市首相は「出来ることと出来ないことがある」と言ったとのことだが、日本の憲法9条がある下では建て前でもそう答えざるを得なかったと思われる。「出来ること」という言葉が実にクセモノではあるが・・・。
国民の立場からすれば、自衛隊員の犠牲が取りあえず免れることもあって、「憲法9条のおかげ」であるが、自衛隊の日米軍事行動を企てる歴代自民党政権にとっては「憲法9条のせい」であろう。高市首相の本音もそこであると思われる。2015年に成立した安保法制(戦争法)は、他国との軍事行動をも可能にする「集団的自衛権」に基づくものである。成立時の安倍政権以降、この安保法制は今のところ発動されていない。実に無理な憲法解釈を基にして成立させた法であるが、憲法9条のおかげで「フルスペックでの発動」は出来ない。高市政権はその「フルスペックでの発動」を可能にするため、憲法改定に躍起になっている。
今まで憲法9条がある下で問題になっていたのは、「攻められたらどうする?」というものであった。しかし今、大きな危険性を持っているのは「攻められたらどうする?」ではない。上記のように他の国と、具体的には「米軍の戦争に共同で参画させられる危険」の方がはるかに危険性が高く、それこそが問題になっている。「攻められる危険」をことさらに強調してしまうのは、周辺諸国との緊張緩和をないがしろにし、話のすり替えにならざるを得ない。
重ねて言うと、憲法9条改定(改悪)の是非は「攻められる危険」に対するものではなく、「米軍との一蓮托生の戦争に積極的に参戦させられる危険」である。「攻められたらどうする?」という話に持ち込まれたら、「それは話のすり替えだ」と言えるようにしたいと思う。
山岸和典
