憲法記念日に寄せて ~壊憲の動きに抗し、憲法を守る活動を~

大井九条の会 代表 田村嘉浩

 5月3日、74回目の憲法記念日を迎えました。東京都や大阪府など4都府県に3回目の緊急事態宣言が発令される中での、昨年に続くコロナ下の記念日です。新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから1年と5か月が経過しましたが、政府の対応は後手に回り、医療体制は危機的な状況です。また期待されていたワクチン接種も大幅に遅れ、国民に行き渡るめどさえ立っておらず、感染拡大に歯止めがかからなくなっています。コロナ禍が長期化する中で、多くの人々が暮らしを奪われ、命さえ脅かされる事態になっています。政治は国民の命と暮らしを守るためにあり、それができないでいる政府の責任は大きいと言わざるを得ません。
 菅義偉首相は憲法記念日の3日、改憲派の集会に寄せたビデオメッセージの中で、新型コロナウイルスの感染拡大に触れ、大災害などの非常時に内閣が国民の権利を一時的に制限する「緊急事態条項」の創設の必要性を語り、その上で、自民党が掲げる「自衛隊明記」「緊急事態条項創設」などの「改憲4項目」について、「自民党は、(国会の)憲法審査会で活発に議論を行っていただくため、憲法改正のたたき台を取りまとめている」と強調しました。
 「緊急事態条項」は、首相が緊急事態を宣言すれば、政権はあらゆる法を無視して、国民の権利や人権を制限することが可能となる危険なものです。政府のコロナ対策の遅れは、憲法に緊急事態条項がないからではなく、医学や医療の専門家の知見を生かさず、経済やオリンピックを優先した場当たり的な対策そのものに問題があったからです。憲法は25条1項で「すべての国民は、健康で文化的な最低限の生命を営む権利を有する」とし、2項で国にその実現を義務づけています。今政治に求められているのは、この憲法の精神を踏まえて、すべてに優先して国民の命を守り、生活保障や休業補償をすることです。コロナ対策という「公共の福祉」のためであっても権利の制限は最小限に留めるべきであって、無制限の人権抑圧が可能な緊急事態条項の創設を許すことはできません。
 また憲法9条への「自衛隊明記」も危険です。安倍前政権が憲法の平和主義と立憲主義を破壊し強行した安保法制が施行されてから5年がたちました。同法制が海外での米軍の戦争に自衛隊が参戦し武力行使できる道を開いた中で、ミサイル防衛体制の強化や敵基地攻撃能力の保持など軍事力が増強され、自衛隊と米軍との一体化も急速に深まっています。そんな自衛隊を9条に明記することは、9条の「戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認」を無効化することであり、「戦争する国」づくりの歯止めを失うことになります。4月の日米首脳会談で、菅首相はバイデン米政権に、「自らの防衛力を強化する」ことを約束し、日米軍事同盟にもとづく大軍拡を推進する姿勢を鮮明にしました。しかし、日米軍事同盟の強化で中国に対抗することは、中国の行動を抑止することが目的であっても、逆に米中の軍事的緊張を高め、日本が米中の戦争に巻き込まれる危険があります。憲法9条の精神のもと、韓国やASEAN諸国などと連携して、米中双方に冷静な対応を求める協議の場を設けるなど、平和的な外交交渉で問題打開の道を拓く先頭に立つべきです。
 菅首相は、憲法改正の手続き法である「国民投票法改正案」を、連休明けの6日にも、衆院憲法審査会での採決を目指しています。大井九条の会は、こうした動きに反対の声を上げると共に、今年も憲法九条を守る活動を会員の創意工夫を生かしながら続けていきたいと思います。

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