代表年頭挨拶ー戦争準備でなく、平和の準備を!

2023年1月12日馬場地区から臨む富士山

 昨年の11月、大井九条の会は結成九年目を迎えました。昨年は、コロナ感染が続く中で、2月にロシアのウクライナ軍事侵攻が始まるという大変な年でした。私たちの活動も、戦争が遠い昔の話ではなく、すぐそこにある身近な危機なのだということを改めて意識した活動になりました。毎日のように流されるウクライナの惨状は、一昨年に上演した朗読紙芝居「戦争とケン一」で描かれた戦争の悲惨そのものでした。12月に開催した戦時体験者お二人の手記の朗読と懇談会のお話から、戦場から遠く離れた銃後でも、ごく当たり前の日常が奪われ、勤労奉仕や食糧難、空襲の恐怖、身近な人の死があったこと、そして戦争は絶対だめだというお二人の強い思いが伝わってきました。終戦から77年が経過し、戦争を体験された人から直接お話を聞くことが困難になっています。戦争を知る世代の人たちはあと何年、自身の体験を語ることができるかの全国調査では、「あと5年」という結果でした。いよいよ語れる人がいなくなる中で、大井九条の会として、その体験や教訓を引き継ぐ活動を行い、「戦争する国づくり」を阻止する課題に取り組んでいきたいと思います。
 さて、2022年は将来、日本が軍事大国に舵を切った年として記憶されることになるかもしれません。昨年の12月、国会での論議もせずに岸田政権は安保3文書を閣議決定しました。この3文書で、日本は「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境のただ中にある」とし、中国は「最大の戦略的挑戦」となり、これに対処するために相手の領域内を攻撃する敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を決定しました。さらに防衛装備移転三原則の見直しと条件付き武器輸出、5年以内の防衛費の国内総生産(GDP)比2%を掲げ、2023年度から5年間の防衛費の総額が43兆円。来年度の防衛費は前年度の1.25倍、戦後最大の6兆7880億円となり、まさに軍事大国への大転換です。戦後日本は、先の侵略戦争の反省を踏まえ、憲法で「戦争放棄・戦力不保持」を決め、防衛政策の基本として「専守防衛」を掲げてきました。今回の3文書の閣議決定は、この憲法に違反し専守防衛を投げ捨てるものです。
 「九条の会」の呼びかけ人の一人で評論家の故・加藤周一さんが、2005年11月の「九条の会」の講演会で、「平和を望むなら、戦争を準備せよ」というラテン語のことわざを紹介しつつ、これは「間違っています」と指摘。「戦争の準備をすれば、戦争になる確率が大きい。もし平和を望むなら戦争を準備せよじゃあない。平和を望むならば、平和を準備した方がいい。戦争を準備しない方がいいです。準備は容易に本当の戦争の方へ近づいていく。非常に早く強く」と語っています。
 2015年、安倍政権によって安保法制が成立し、集団的自衛権の行使容認など、海外での米軍のあらゆる戦争への参加が可能になり、今回の岸田政権による安保3文書の閣議決定で、敵基地攻撃能力の保有を明記し、日米が一体となった敵基地攻撃=先制攻撃が可能になりました。こうした戦争の準備ともいえる重要な決定がわずか7年の間に行われました。
 2023年を「新しい戦前」にしないために、今日本に求められていることは、米国と一体となって中国との対立姿勢を鮮明にすることで軍事的緊張を高めることではありません。両国との国交関係を生かして、米中双方に自制を求める外交です。そして、憲法九条を持つ国として、東アジア全体を巻き込んで、平和のための対話と協力に基づく平和外交に力を注ぐことです。
 大井九条の会は、自公政権による改憲と軍拡の動きを止め、国民の命と暮らしを守るために、憲法を守り、いかす政治の実現を目指した活動を今年も進めていきたいと思います。

大井九条の会代表 田村嘉浩

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