78回目の終戦の日に寄せて「戦う覚悟」ではなく「戦わない決意」を!

注目された「新しい戦前」発言
太平洋戦争が終わって、今日で78回目の終戦の日を迎えました。毎年8月は、6日の広島、9日の長崎、そして15日の終戦の日と続き、改めて戦争について考える機会です。昨年の2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻が続く今年は、例年以上に戦争への危機感を抱かせる年になりました。昨年末のテレビ番組で、タレントのタモリさんが司会の黒柳徹子さんの「来年はどんな年になるでしょうか」という問いに対して、「新しい戦前になるんじゃないですかね」と答えたことが注目されましたが、多くの人の実感に近いのではないでしょうか。

戦後の不戦の誓いを覆す異次元の大軍拡
満州事変から15年にわたる日本の侵略戦争によって、310万以上の日本国民と2000万人以上のアジア・太平洋地域の人々が犠牲になりました。戦後日本は、戦争の惨禍を再び繰り返してはならないと誓い、「平和国家」として再出発しました。しかし、その誓いを覆すような事態が急速に進んでいます。
岸田政権は昨年末、安保三文書を閣議決定し、敵基地攻撃能力の保有と5年間で43兆円という未曾有の大軍事計画を打ち出しました。5年後の2027年度には、防衛費を国内総生産(GDP)比2%にすることも明記し、まさに異次元の大軍拡です。岸田首相は閣議決定後の記者会見で、「私は、内閣総理大臣として、国民の命、暮らし、事業を守るために、防衛力を抜本強化していく」と語り、その目的を「日本の防衛」にあるかのように説明しています。しかし実際は、台頭する中国を軍事的に封じ込めようとするアメリカの戦略と一体化するためです。理屈としては、アメリカとの同盟関係を強化することで抑止力を高め、そのことが日本を守ることになるということですが、逆を言えば、日本が攻められていないのに、アメリカの起こす戦争に日本が巻き込まれることになります。

「台湾有事は日本有事」は本当か
安保三文書では、中国を最大の脅威と位置づけ、中国による我が国への侵攻の抑止を目的とした防衛力強化だとしています。しかし、安全保障の専門家は「現実問題として、日本がいきなり北朝鮮や中国から侵攻を受ける可能性は低い。日本が武力攻撃を受ける可能性があるとすれば、台湾海峡や南シナ海で、アメリカと中国との間で武力衝突が発生し、その結果、米軍基地のある日本が攻撃を受ける事態なのです」と分析しています。よく自民党の政治家が「台湾有事は日本有事。日米で一緒に台湾を防衛しなければならない」という発言をしていますが、その場合、日本が攻撃対象になり大きな被害が発生することが、アメリカの戦略国際問題研究所の研究や長崎大学核兵器廃絶研究センターを中心とした研究で明らかになっています。

国民に「戦う覚悟」を迫る安保三文書
安保三文書の「策定の趣旨」の最後に、次のように書かれています。「国家としての力の発揮は国民の決意から始まる。…本戦略の内容と実施について国民の理解と協力を得て、国民が我が国の安全保障政策に自発的かつ主体的に参画できる環境を政府が整えることが不可欠である」。つまり、文書には「国民の決意」とありますが、この安保三文書の内容通りに実施されれば、国民に多大な困難や犠牲が伴うことを理解した上で自発的に協力する「覚悟」を国民に求めているということです。この点について、岸田首相は「丁寧な説明」をしていないし、国民も「理解」していないのではないでしょうか。

国民の命と暮らしを危うくする麻生副総裁の発言
最近、自民党の麻生太郎副総裁が台湾で行った講演で「日本、台湾、米国をはじめとした有志国に、非常に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている。戦う覚悟だ」と発言し、さらに「金をかけて、防衛力を持つだけではダメだ。いざとなったら台湾海峡の安全のために使うという明瞭な意思を相手に伝えて、それが抑止力になる」と述べています。ずいぶん勇ましい発言ですが、当の中国やアメリカそして台湾は、有事が発生した場合のリスクの大きさから慎重な態度を取っているのに対し、戦争を煽る挑発的な行動です。毎日新聞の記事に、事前に首相官邸や外務省などと「入念に発言内容を調整していた」とありましたが、それが事実なら、日本がアメリカや台湾を巻き込んで、国民の命や暮らしを危うくする行為を、日本政府自身が行っていることになります。

今求められているのは「戦わない決意」
我が国は、日本国憲法の前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにする」と決意しています。今求められているのは、「戦う覚悟」ではなく、戦争の惨禍を再び繰り返さないという「戦わない決意」です。

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