国民が声を上げれば政治は動く

追いつめられた安倍政権
通常国会が野党の延長要求を自民党が拒否し、17日に閉会しました。新型コロナウイルス感染への対応でますます国会審議の必要があるにもかかわらず閉会したのはなぜか。それは、後手に回ったコロナ対策、持続化給付金の遅れや不明朗な民間委託を巡る問題、検察人事問題、河井案里参院議員と夫の克行前法相の公職選挙法違反疑惑など(挙げれば切りがない!)の追及から逃れるためです。言い換えれば、安倍政権がそれだけ追いつめられているということです。
では何が安倍政権を追いつめたのか。それは、コロナ危機の中、政治と暮らしの関係を意識するようになった国民が、国民の命や暮らしを軽視し国政を私物化する安倍政権のひどさに気づき、一斉に声を上げたことです。

#検察庁法改正案に抗議します
検察幹部の定年を内閣の恣意的判断で延長できる法案(検察庁法改定案)が廃案になった発端は、ツイッター上に投稿された「#検察庁法改正案に抗議します」でした。この投稿に対する共感の輪はあっという間に広がり、一週間足らずで投稿数は一千万を超えました。こうした声を背景に、国会での野党の追及や日本弁護士連合会会長、元検事総長ら検察OB、東京地検特捜部OBの異例の反対声明・意見書発表などが大きなうねりとなり、今国会での採決強行を断念させました。そこには、法案そのものの問題点に対する怒り、そして「コロナ対策をまともにやらないで国政私物化とは何ごとか」という国民の二重の怒りがあり、安倍政権を追い込んだのです。

#サイレントマジョリティーは賛成なんかじゃない
昨年の臨時国会では、二○二○年度から始まる大学入学共通テストへの英語民間試験導入が、当事者である高校生が声を上げたことで「延期」に追い込まれました。この試験は、受験生の住む地域や家庭の経済状況によって受験機会に格差が生じ、試験の公平性が確保されないという点が問題になりました。その際、萩生田文科大臣がツイッターに「サイレントマジョリティーは賛成」、つまり、「多くの人たちは入試改革に賛成しています」と書き込みました。この書き込みに高校生たちがすぐに反応し、「サイレントでごめんなさい。まさか賛成だと思われていたとは…大反対です」「#サイレントマジョリティーは賛成なんかじゃない」とリツイートしたのです。この後、多くの高校生たちが、インターネットなどで中止や延期を訴えたり、文科省前で中止を求める抗議集会に参加し、マイクを握り「生徒の声を聴け」と反対の声を上げました。この問題は、文科大臣の「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」などという教育格差を容認するような失言(本音)があり、野党の追及と市民・高校生たちの運動が一気に燃え広がり、「延期」にせざるを得なくなりました。

声を上げれば政治が変わる
社会学者の小熊英二氏が、「三割が保守の固定票、二割がリベラルの固定票、五割の中道派が棄権」という得票構造を描いています(小熊英二『私たちの国で起こっていることー朝日新聞時評集』朝日新書)。この分析に従えば、五割の人が声を上げなければ、「三割の人のための政治」が行われ、三割の人が決めたことに、七割の人が従わざるを得ない状況が続くということになります。しかし、逆を言えば、五割の人の一割以上が声を上げれば政治を変えることができるということです。ジャーナリストの伊藤千尋氏が言う「15%の市民の目立つ行動が社会の空気を変える」(15%の法則)と同じです。現在のコロナ危機のもと、体験的に政治と暮らしの関係に気づき、これまで政治に関心のなかった人も含めて、かつてない多くの人々が「こんな政治でいいのか」と声を上げています。今こそ、政治の在り方を、安倍政権のねらう憲法改悪の方向ではなく、憲法の精神を生かす方向に大きく進める絶好のチャンスです。

大井九条の会代表 田村嘉浩

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