菅政権の1か月余りの実態は ~強権政治の転換を~
明らかになった強権的な政治姿勢
菅義偉首相が就任してから16日で1ヶ月が経過しました。安倍政権の継承を掲げながら、苦労人・たたき上げ・令和おじさん・パンケーキなどのイメージ戦略で、庶民的・親しみやすさを演出し、携帯電話料金引き下げ・不妊治療の保険適用拡大など、国民が喜ぶような政策を打ち出して、「国民のために働く内閣」をアピールしてきました。しかし、その一方で、安倍政権以上の強権的な政治姿勢が明らかになっています。
まず安倍政権の負の遺産ともいうべき「森友・加計・桜」疑惑について、既に決着したことだといっさい解明に動こうとしないことです。森友学園への国有地売却を巡り、財務省による文書改竄を指示され自殺した近畿財務局職員、赤木俊夫さんの遺書や改竄の経緯を記録したファイルが存在し、赤木さんの妻が再調査を要請したにもかかわらず、菅義偉首相は再調査は必要はないと拒否しました。
「学問の自由」を侵害する任命拒否
また菅首相が日本学術会議の推薦した会員候補105人のうち6人の任命を拒否し、その具体的な理由を明らかにしていないことです。この問題は、「学問の自由」にとどまらず表現の自由・言論の自由を脅かすものと受け止められ、多くの団体から抗議や撤回を求める声が上がり、任命拒否撤回を求めるネット署名は10日で14万人を超えました。また世界的に最も権威のある科学誌『ネイチャー』も取り上げ「政治によって学術の独立を侵食」するものだと批判しています。
日本学術会議は、政府の介入によって科学が戦争に協力させられた戦前の反省の上に、昭和24年に内閣総理大臣の所轄の下、政府から独立した機関として設立されました。また、政府が不当に学問に介入することがないように「学問の自由」が憲法23条に明記されました。日本学術会議法は7条で、会員は「会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する」と規定しています。1983年に会員の選出方法を変える法改定を審議した国会で、当時の中曽根康弘首相は「政府が行うのは形式的任命にすぎない」と繰り返し答弁しています。今回の首相による任命拒否が、学術会議法7条に反し、憲法が保障した学問の自由も踏みにじる違法・違憲の行為であり、国権の最高機関である国会をないがしろにする暴挙であることは明白です。
権力による国家統制を狙う菅首相
菅首相は、安倍前政権で官房長官として内閣人事局を通じて人事による官僚統制を主導し、政府の方針に沿わない官僚や組織を排除・攻撃してきました。内閣法制局長官やNHK経営委員会、検察庁人事への介入は、権力による国民統制が目的であり、今回の任命拒否は、その矛先を学術会議に向けたものです。任命が拒否された6人はいずれも安倍前政権の重要法案に批判的な意見を述べた方であり、学術会議は政府が推進しようとする大学における軍事研究に反対する表明を出しています。政府は今回の任命拒否の問題を、学術会議の運営や組織のあり方の問題だと論点をずらし、河野行政改革大臣は学術会議を行政改革の対象とすると表明し、自民党は学術会議の在り方を検討するプロジェクトチームを発足するなど、攻撃を強めています。
強権政治転換の取り組みを
最近の各種世論調査では、菅首相の説明について「納得できない」が圧倒的に多く、政権支持率も政権発足時から10%前後下がっています。任命拒否問題への批判が大きく影響したと考えられますが、それでも50%から60%と高い支持率を維持しています。このまま何の説明もなく、任命拒否を撤回させることなく終わってしまえば、菅首相の強権政治を許すことになります。権力を手にした独裁者による強権政治の行き着く先は、決して国民にとっての幸せではありません。任命拒否を糾弾する声を上げ、強権政治を転換する取り組みをさらに広げていくことが大切です。