2022年大井九条の会年頭挨拶

ビオトピア「森の道」からの富士山

 昨年の11月、大井九条の会は結成8年目を迎えました。昨年は、一昨年から続くコロナ禍での活動となり、コロナの感染拡大やそれに伴う緊急事態宣言の発令を受けての厳しい活動になりました。しかし、毎月の例会継続や二回の「平和への思いを語る会」(5月と12月)を開催し、その過程で新たな協力者や会員を迎えることができました。「語る会」で上演した朗読紙芝居「戦争とけん一」は、実際に戦争を体験された宇田川先生が、戦争を知らない世代に戦争の実像を知って欲しいという思いで作られた紙芝居が原作です。その紙芝居の語りの部分を複数人による朗読劇にし、大きな画面に効果音を入れることで、東京大空襲や戦災孤児たちの実態をよりリアルに伝えることができたのではないかと思います。また、朗読紙芝居に取り組むことで、上演した私たちの認識も深まったということもありました。今年は23歳という若さで戦死した詩人竹内浩三を題材にした朗読劇「ぼくもいくさに征くのだけれど~竹内浩三の詩と青春~」を五月に上演する予定です。戦争を体験された人たちから直接お話を聞くことが困難になってきた現在、その体験や教訓を引き継ぐ活動を通して「戦争する国づくり」を阻止する課題に取り組んでいきたいと思います。


さて、昨年の10月の総選挙で自公に加え日本維新の会が議席を増やし、衆院で改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2を上回りました。その上、国民民主党が維新の会に接近し憲法審査会の開催に同調したことで、国会での改憲論議が急速に進む危険性が高まっています。岸田首相は先の臨時国会の施政方針や今年の年頭挨拶で「憲法改正のさらなる推進、実現に向けて」の意欲を繰り返し述べ、改憲のための体制や運動を強化しています。その主な狙いは「憲法九条の改悪」です。憲法九条は多くの犠牲や悲劇をもたらした先の侵略戦争の反省を踏まえ「戦争放棄・戦力不保持」を国の方針として決めたものです。戦後、日本は進駐軍の要求に応じて朝鮮戦争をきっかけに再軍備が始まり、イラク戦争をきっかけに自衛隊の海外派遣が始まりましたが、一度も戦闘に参加することなく、一人も殺さず殺されもしなかったのは、九条が歯止めになっていたからです。九条を改悪することは、その歯止めをなくし、日本を「戦争する国」に変えてしまうことです。
岸田首相は歴代政権が違憲としてきた「敵基地攻撃能力」の保有、軍事費のGDP(国内総生産)比2%超の大軍拡、そして安保法制に基づく日米の軍事一体化を加速させようとしています。中国や北朝鮮の軍事的脅威から国民の命と生活を守るためだと正当化していますが、軍事に軍事で対抗することは、日々の国民の生活を圧迫することになり、実際に戦争になれば日本全土が戦場になり、多くの人命が奪われ生活も破壊されてしまいます。そして、それは相手国にとっても同じことです。戦争には加害と被害の両面があり、総力戦となる現代の戦争に勝者は存在しません。日本は、米国と一体となって中国との対立姿勢を鮮明にすることで軍事的緊張を高めるのではなく、両国との国交関係を生かして、米中双方に自制を求める外交こそが求められているのではないでしょうか。そして、憲法九条を持つ国として、東アジア全体を巻き込んで、平和のための対話と協力に基づく平和外交に力を注ぐべきだと思います。
大井九条の会として、自公政権による改憲と軍拡の動きを止め、国民の命と暮らしを守るために、憲法を守り、いかす政治の実現を目指した活動を今年も進めていきたいと思います。

大井九条の会代表 田村嘉浩

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