サーロー節子さんの著書「光に向かって這っていけ」を読んで

岩波書店 税込み1980円

この本を読んだ最初の印象は、著者が優れた文筆家であり、表現者であり、組織者であるということでした。恐らく、広島で被爆しなかったら、いくつかの分野で世界的に評価されるような、いろいろな功績を上げて来られただろうと思わされたことです。プロローグでこう言っています。
「人生を賭して、なぜ私は、それほどまでして核兵器の問題を告発し続けてきたのか。 私は13歳の時に被爆した。命からがら生き延びたが、倒壊した建物から逃げ遅れた同級生たちは生きたまま焼かれた。混乱の極みの中で、姉と甥を荼毘に付した。広島ではその年の末までだけで実に約14万人、長崎では約7万人が犠牲になったと推定されている。私は被爆して間もない高校生の頃から、被爆後の人生をどう生きるべきかなのか、考え続けていた。敗戦後の物資不足で皆が空腹に耐えていた時代から、誰一人このような日に会うことのない世の中を求め、『社会正義』の意味を問い続けた」ここには、愛すべき人たちを残虐に一瞬のもとに死なせた核兵器にたいする計り知れない怒り、悔しさ、世界で初めての残虐兵器を体験した者の思いが根底にあることが伺えます。
そしてノーベル平和賞受賞演説で「終わりの始まり」と表現したことについて、「新たなスタート地点に立ったことへの万感の思いを込めた」と書いています。そして今後について、「広島と長崎が戦争による最初の核攻撃を受けて以来、被爆者は『こんなことが決して繰り返されてはならない』と振り絞るような訴えを重ねてきた。被爆者やICANのようなNGOが、核保有国の強大な軍産複合体の権力システムを真正面から告発することは、途方に暮れるほどの厚い岩をうがち、そこから差し込む一筋の光に向かって、這いつくばりながら一歩一歩進もうとするようなものだ。私の反核人生を貫くのは、『アクティビズム』行動主義である。まだまだ仕事がある。渾身の力を振り絞って、核兵器の非人道性を訴え続けたいのだ」と書いています。
この本を多くの方が読まれることを望んでいます。
ひろ

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