軍拡の時代に泣きながら抵抗を始めよう

昨年の12月23日になかにし礼さんが亡くなった。「石狩挽歌」「北酒場」など数々のヒット曲を手がけた作詞家として有名だが、旧満州からの引き揚げ体験をもとにした自伝的小説『赤い月』などの小説も書いている。一昨年の8月に大井九条の会の「平和への思いを語る会」で、西山みいさん(大井町在住)の手記「旧満州で迎えた終戦 そして引き揚げ」の朗読を行うに当たって、『赤い月』を参考資料として読み、なかにしさんの凄惨な戦争体験を知った。著書『天皇と日本国憲法』(2014年)の中で「私たち満州で敗戦を迎えたものは3度にわたり、国家によって見捨てられた。つまりは棄民されたのである」と述懐し、多くの犠牲の上に成立した憲法について「戦争をしないことをうたう日本国憲法は世界一です。特に前文は人類の進化の到達点だといってもいい。世界に誇れる芸術品ですよ」と述べ、一貫して護憲の姿勢を貫いてきた。
2014年7月1日、当時の安倍政権が集団的自衛権行使容認を閣議決定した時、毎日新聞の依頼で「平和の申し子たちへ! 泣きながら抵抗を始めよう」という長い詩を発表した。「二○一七年七月一日火曜日 集団的自衛権が閣議決定された この日 日本の誇るべき たった一つの宝物 平和憲法は粉砕された つまり君たち若者もまた 圧殺されたのである」で始まり、「醜悪と愚劣 残酷と恐怖の 戦争が始まるだろう ああ、若き友たちよ! 巨大な歯車がひとたびぐらっと 回りはじめたら最後 君たちもその中に巻き込まれる」「君の命よりも大切なものはない 生き抜かなければならない 死んではならない が 殺してもいけない」と続き、最後に「産声をあげる赤児のように 泣きながら抵抗を始めよう 泣きながら抵抗をしつづけるのだ 泣くことを一生やめてはならない 平和のために!」と訴えて終わる。戦争の悲惨さを体験したなかにしさんの魂の叫び、そして戦争を体験した世代として次の世代に伝えなければならないという強い意志が伝わってくる。
大井九条の会は、2014年11月、この安倍政権の閣議決定に危機感を抱いた有志によって結成され、憲法を守るための活動を6年間続けてきた。この間、集団的自衛権を含む安保法制=戦争法が2015年9月に成立し、さらに政権が菅政権に変わっても自衛隊を九条に明記する改憲の策動が続いている。また北朝鮮や中国に対する脅威を口実に、軍事力強化のための軍事費が毎年5兆円を超え、昨年末には敵基地攻撃能力の保有を装備面・能力面で実現する閣議決定が行われた。「専守防衛」という名のもとで、ミサイル防衛体制の強化や敵基地攻撃能力の保持、自衛隊と米軍の軍事活動の一体化などが、国会での十分な審議という民主主義の手順を踏まないままに進み、「戦争が可能な国づくり」が進んでいる。
なかにしさんは先述の著書の「文庫版のためのあとがき」で「政治のほうが民主主義を否定しようとしているなら、作家は命懸けで文句を言わなくてはならなくなる」と述べている。まさに今がその「命懸けで文句を言わなくてはならなくなる」時に違いない。戦争を否定し、一貫して憲法を守る発言と活動を続けてきたなかにしさんの思いを引き継ぎ、これからも憲法を守り生かす活動を、大井九条の会としても個人としても続けていきたい。

大井九条の会代表 田村嘉浩

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